おひとりさま漫画家ですが何か。

すきま漫画家かずはしともの 食べて飲んで寝てちょっぴり仕事の日常

●怖い体験とは?

「ホラー漫画描いてる人って霊とか寄ってこない?」
と問われたことがあります。
残念ながらその手のモノには遭遇したことはありません…たぶん。
強度の近視なので、裸眼の時にそのへんにいても見逃すかもしれない。逆にそれでも見えたらきっと本物でしょう。

遊園地のお化け屋敷は結構好きです。ライドタイプのには率先して入ります(自分で歩くタイプはちょっと怖いけど!)。

…が。
絶叫マシンはだめです。
おとなしめのジェットコースターなら乗れますが、最近ほとんどが「絶叫系」じゃないですか。
だいたいが高所恐怖症なんです。高いとこから凄いスピードで落とされるってなんだよ。とんでもねえ。

その高所恐怖症も、ずっと自覚してなかったのにオトナになってから気づいたホンモノです。
むしろ「高いところは気持ち良くて好き」…くらいには思っていたのに。

ある時、友人グループで横浜を観光し、マリンタワーに登ろうということになったのです。
一番上まで徒歩で登ると記念品がもらえるというもの。
張り切った私はチケットを買い、先頭を切って階段へ…。
そこまでは良かった。

登り始めた吹きっさらしの外階段で私の足は止まらなくなりました。 

恐怖でひたすら目の前の一段しか見ていられなくて、眼下に広がる海や山下公園やアーケードにたむろする豆粒のような観光客たち…を見ないように見ないように、早く終わらせたくてずんずん登るしかなくて。
下の方から「もっとゆっくり〜」と友人たちの悲鳴が…そんな心の余裕、ないよ!!

てっぺんで記念品のマリンタワー定規を手にした時はもう2度と登るもんかと心に誓っていました。

で、自覚したんです。高所恐怖症
高いところへ行くと「足の裏がみんみん」します。
高層ビルの上階などでガラスが一枚あれば下が見えても割と平気。でも外気に触れているとたったの3階の高さでも恐ろしい。

●「怖いマンガ」のお仕事

ところが残念なことに「なんでも漫画家」の仕事はルポものなんかもありまして…。
Yランドの名物コースター「B」、富士山のふもとFHランドの巨大コースター「F」…ええ、仕事で乗りましたとも(泣)

「F」は先頭車両の最前列に乗せられるというのを嘆願して2列目にしてもらい(最前は編集さん)、ずっと下を向いて安全バーを両腕でがっちり抱えていました。周りなんか見ちゃいません。
最大落差70m、最高時速130km、戦慄の3分36秒間。
どうにかやり遂げましたが、風景を見ていないのでGがかかる方向が予測できず、両腕・両腿の内側は翌日青あざだらけでした…。
プレスの腕章つけてるから特等席だったのに…ごめんなさい並んでいたお客様たち。
でも私、1万円もらってももうコレには乗りたくない。

…そして時は過ぎ、数年前。
私は絶叫マシン好きの友人と久しぶりにFHランドに遊びに行きました。
懐かしの「F」はいまだに不動の人気。
新顔の楽しげなアトラクションもいろいろ増えています。
で、
「あれは昔のことだしぃ、もう乗れるようになってるんじゃないかな?」
と考えた私は、取材当時にはまだ無かった絶叫マシン「E」に乗ってみました。
背中からハーネスでわしっと掴まれて振り回される系の、足が地に着いてないコースター。

…もう、3万円くれると言っても一生絶叫マシンには乗りません。


(5万円なら考えます)

●中肉中背

健康体重・BMI判定ともに平均ど真ん中なのですが、体脂肪率は恥ずかしながらかなり多め。

とはいえどこも体調は悪くないので特に対策もせずのほほんとしてたんですが、先日定期通院(片頭痛持ちなんです)の際、薬局の待ち時間に無料健康チェックを受けたら。血管の弾力の危険度が実年齢よりかなり上ですと!
ということはつまりその、コレステロールがプラークになって血管の内側に付着し始めてるってことっすか!
よくネットのサプリメント広告とかで断面の図解が流れてくるヤツっすか!

なにしろおひとり様、万一血管が破れて1人で動けない状態になっても力を借りる子や孫はおりませんので自己防衛しないといけません。

30代から自由業ゆえ体が資本…と毎年人間ドックに入ってきました。
そしてちょい太めと言われたら脂質や糖質を控えてダイエット、腎臓で注意を受ければ水分を多めに摂って事なきを得てきました。それなのになんで血管に脂肪が溜まる?何もしてないのに〜?

…同年代の友人曰く「何もしないから太るんだよ。年取ると何もしないでいると太るの!」
はい名言頂きました〜。
 
血管に脂肪が溜まると言うことは、まあ、隠れ肥満なわけで。というか体脂肪率はとっくに「肥満」を指してる訳で。
そうか…健康や減量に対するアプローチはいろいろやってきたけど…
いよいよ…いよいよ最後の砦、今まで避けて通ってきたアレ…
「う ん ど う」
をしないといけないのか…。

●早朝ゆる運動 

食べるの我慢とかは平気だけど、運動は苦手。胸を張って苦手。

かと言って、日頃ぐうたらしている人間がいきなりジョギングとかすると膝を痛めます。
ここは続けることを第一に、ウォーキング。
呼吸と姿勢を意識しながら近所をぐるっと約45分。普段の歩きが結構速いんですが、さらに少し加速。
朝の空気はそこそこ涼しいけれど、次第に汗ばんでいきます。
食事中の野鳥(実家近くの鳥の鳴き声の豊富さと言ったら!)を眺め、花や木の匂いを深呼吸。
…蚊に食われるのが玉に瑕。

歩きながら気がついたんですが、早朝ウォーキングのほとんどは高齢のかたのようです。
4時台に多いのは男性1人か、プラス犬。
5時台にはご夫婦。
そして6時台には女性2人組かグループが追加されていく感じ。
ついでに公園でラジオ体操しているみたい。
女性1人、男性の2人組やグループはあまりおらず…あ、いや欧米人ジョガーのお兄さんたちはみかけましたな。

男性は黙々と歩きたくて、女性はコミュニケーション目的なのかもしれない。
そして私は夏も近づき、UV対策も考えて夜明け前に家を出ることにしました。
いま4時半にもう太陽が上っているから、8月とかになったら3時起きかもしかして…!?

帰宅して水飲んで熱いシャワーを浴びると気分すっきり。
朝ご飯を食べて、コーヒーを淹れて、こうしてブログを書けるわけです。

しかしなあ、歩いてるせいかご飯が美味しくてね…。
そして夕飯のあと眠くてほとんど起きていられず、ゴールデンタイムのテレビ番組とか見られずに早々に眠ってしまうんです。
食べてすぐ寝ちゃだめじゃん!
…はい、2kg太りました。

次の通院の日、果たして私の体脂肪と血管はどうなっているのでしょうか?

●蕎麦エリート!?このわたしが?

大人になって、勤め先の夏。
残業で疲れてきりっとした物が食べたくて、頼んだ出前の冷やしたぬき蕎麦。

ラップを剥がして、箸を割る。

…え。
何これ?
白っぽい。つるつるしてるし。
箸で持ち上げると切れちゃうよ?
噛み応え、ないよ?
のびた細うどんじゃないの?(うどんさんごめんなさい)

今思えば出前蕎麦の標準レベルだったんですが…。

私の口は知らず「蕎麦エリート」になってしまっていたのです。 
蕎麦の英才教育、恐るべし!

そんなに好きでは無かったはずの蕎麦が。
つまらない食べ物だと思っていた蕎麦が。

「う、うぉーたー」…
ヘレン・ケラーよろしく、私はその時ずっと身近にいた「美味しい」蕎麦の存在に気付いたのでした。

何気なく遊んでいた幼なじみが、世間に出てみたら実は美形と知った…みたいな?(違うと思う)

そんなこんなで、おそまきながら蕎麦の魅力に目覚めました。
ワインなどもそうですが、対比する複数の味を知って、xとyの座標がはっきりして、初めて美味しさがわかることってあると思うんです。
「旨いかまずいかは感覚だから理屈じゃない」というむきもあるでしょうけれど、私はワインはそうでした。
たくさん味わって楽しんで、そうやって自分が本当に好きな味に気付くのかなと。

●伝説の蕎麦屋の終わり
 
蕎麦の美味しさを知ってからは、親にくっついて葉山のお蕎麦屋さんを訪れることも増えました。
ずずずず。ずぞぞぞぞ。かみかみ。ごっくん。こんな美味しかったんだ、私のばかばか、味音痴。
蕎麦がきも蕎麦の風味が生きてるし、蕎麦団子も素朴できな粉と相性も良い。
レジの奥様が時々おみやげにと下さる胡麻油も美味しいです。

しかし幸福な日々は永遠には続きませんでした…蕎麦の味が変わったのです。
年配の御主人が体調を崩されたそうで、奥様が打ったものでした。
同じ材料、同じ道具なのに違うんです。
「オカモトさん、いつもありがとうございます」の声も聞けないことが多くなりました。

そしてある日。
いつものように家族で店を訪れると、定休日では無いのに雨戸が閉まっていました。
白い貼り紙が一枚。車の中からも筆文字が読めます。
「店主 網膜剥離のため蕎麦が打てず 店を閉めさせていただきます 
永年ありがとうございました」

えええ!
理由まで書くかな……ですが、きりっと真面目な蕎麦を打つ御主人の人となりを表しているような。

「心の目で打てよ!」

弟、無茶振り。
でも、御主人の蕎麦を愛するゆえの暴言でしょう。

御主人のご健勝を祈って私たちはその場を離れました。

帰路、
「残念だね…でも閉店のお知らせ葉書くらいくれてもいいのに」と私。
「だって私たちの住所も名前も知らないでしょ」と母。
えっ…?ほぼ毎週40年通い続けたのに…?

そこで私はずっと気になっていたことを訊ねました。

…ねえ、オカモトさんって誰?」

父、
「ずっとそう呼ばれてたよねー、なんか勘違いされてるらしくて」

…はい、うちの名字は全然違うのです。

 
蕎麦の味以外にはテキトーな父も5年前に他界しました。

今は弟が休日に母を車に乗せて、新しい贔屓のお蕎麦屋さんに通っているようです。
何しろ彼は子供の頃から直系生粋の蕎麦エリートですから。


追記:これを書いてから調べて知りましたが、このお蕎麦屋さん、昭和天皇の御用達だったのだそうです。
さすが御用邸の門前。小さな普通のお蕎麦屋さんだったんですけれども。 

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